先日実家に帰ったら、こんな雑誌を見つけました。
集英社から出ている「kotoba(コトバ)」という雑誌です。
「多様性を考える言論誌」という副題(キャッチコピー?)の通り、言葉と社会について、さまざまな角度から多岐に渡るテーマを扱っている季刊誌です。
実家で見つけたのは2012年秋号。ひと昔前に出版されたものです。創刊2周年記念号だそう。
テーマは「日本語を『あそぶ』」。なるほど、記念号ゆえ「日本語」に回帰したのでしょうか。
◇◇◇
なんとなくめくっていくと、興味深い言葉に引き寄せられました。
「なぜ人は『方言コスプレ』をするのか?」
方言コスプレ…?
聞いたことありますか?私には耳慣れない言葉でした。
筆者は田中ゆかりさんという言語学者。
「方言・共通語の両方を使いこなせる『方言・共通語バイリンガル世代』の広まりが大きい」との指摘をまとめた、「『方言コスプレ』の時代」という著書を出版されている方だそう。
◇◇◇
みなさん、方言って使いますか?
私は、親がその土地の人でなかったこともあり、実家がそこまでベタベタの方言を使う環境でなかったこと、また、長年接客業をしていて共通語を使う機会が多いこともあって、あまり強い(?)方言は使わないかもしれません。
ただ、友人との会話や、仕事でもご年配の方への接客だと方言は使いますし、自然と出てきます。日常でも語尾やイントネーションは方言が混ざっていると思います。
記事では、方言についてまず次のように分類しています。
- リアル方言
- ヴァーチャル方言
「リアル方言」とは、いわゆる方言のこと。現実に生活の中で使われる地域方言ですね。
対して「ヴァーチャル方言」とは、イメージとしての方言のこと。リアル方言と必ずしも一致していない方言のことを指すのだそう。
そして、ヴァーチャル方言はさらに2つに分類しています。
- ニセ方言
- ジモ方言
「ニセ方言」とは、話し手の出身地などに関係のない、完全にイメージとして使う方言のこと。
例えば、関西人でもなく普段は共通語を使うのに「なんでやねん」という言葉を使ってツッコミを入れることってありますよね。あれです。
ニセ方言を使うことによってある種のキャラを発動すること、それが「方言コスプレ」だと筆者は述べています。
もうひとつの「ジモ方言」、「ジモ」は「地元」のこと。つまり、話し手の地元がらみの方言ではあるのですが、素で使っている方言をより強調して、「地元性」をアピールするために使う方言のことを指します。
自然に出る方言ではなく、「地元人キャラ」を演出するために使う方言であるため、こちらも「方言コスプレ」に該当するのだとか。
言われてみればどちらも、「あ~わかる!使ったことある!」と感じませんか?
◇◇◇
なぜ、このような「方言コスプレ」が一般的になったのでしょうか?
筆者は、主に2つの理由を述べています。
- 方言がネガティブなイメージでなくなってきたから
- 「何を話すのか」より「どう話すのか」が重要になってきたから
方言を使うことについて、「恥ずかしい」という気持ちはありますか?
わたしはあまり感じないですし、みなさんもそうなのかなと思います。
テレビなどで関西弁のようなメジャーな方言以外も使われるようになり、方言の価値が上がってくるにつれ、ネガティブなイメージがなくなってきた、と筆者は述べています。
加えて、メールやSNSでの伝達が主流である現代社会では、「どのように話すのか」がより重視されるようになってきた、と言います。
そのような社会の中で、瞬間的にキャラが作れる方言は、コミュニケーションをする上で便利なツールのひとつである、と言えるのです。
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いやはや、方言、奥が深い…。
言われてみれば、知らず知らずのうちに「方言コスプレ」してますね。
すごくおもしろい記事でした!
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